SDGsが投資と関係してくる?

最近、テレビや新聞、雑誌などでも「SDGs(エス・ディー・ジーズと読みます)」という言葉をよく見かけます。 また、それに関連した投資への関心が高まっています。 これは、地球規模の環境問題や社会問題、企業統治の在り方などへの意識が、世界中で高まっていることによるものです。そこで今回は、持続可能性という長期的視野から投資に取り組むことの重要性を考えてみたいと思います。

SDGsとは持続可能な開発目標

現在の世界には、貧困、紛争、気候変動、感染症など、解決しなくてはならない課題が山積しています。 私たちの経済活動が環境・社会に与える負荷はますます高くなり、人類の生存基盤である地球環境は危機に瀕しています。 こうした危機感から生まれたのがSDGs「持続可能な開発目標」です。

(SDGsの成り立ち)

SDGsとは、「誰一人取り残さない」という理念の下、持続可能でより良い世界をめざすための国際目標のことです。2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の中で掲げられました。

SDGsは、2030年までに達成すべき17のゴールと169のターゲットから構成され、世界が直面する課題を網羅的に示しています。

(SDGsの特徴)

SDGsの前身は2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)です。 このMDGsが発展途上国の支援を中心とする内容であったのに対して、SDGsは、気候変動等の環境問題、健康と福祉の増進、技術革新など発展途上国のみならず、先進国も取り組むべき課題が追加され、よりグローバルかつ普遍的な内容となっている点が大きな特徴といえます。

SDGsへの官民あげた取組み

SDGsは国連加盟国の全会一致で採択され、すべての国が一体となって目指す目標です。2030年までにSDGsを達成するために必要な投資額は世界で年間5~7兆ドルとされています。

(民間企業の参加促進)

この莫大な投資を国連や各国政府による取組みだけで行うのは困難です。 そこで、SDGsの2030アジェンダでは、「すべての民間部門に対し、持続可能な開発における問題解決のための創造性とイノベーションの発揮を求める」と民間企業の参加を強く促しています。

これは、民間企業の知恵と工夫によって、環境、社会的課題への取組みを進め、社会問題の解決とビジネス市場拡大の双方を実現しようという意図を明確に示したものです。

(政府の取組み)

日本でも、政府が「持続可能な開発目標(SDGs)推進本部」を設置し、民間企業によるSDGsの取組みを幅広く後押ししています。

例えば、発展途上国にビジネスで貢献することをめざす日本企業への支援、日本企業による海外での医療・介護・健康ビジネス等の事業を行う際の事業化支援、SDGs経営を行う企業の表彰等、その内容は多岐にわたります。

(民間企業のメリット)

消費者は、SDGsが示す課題解決につながる製品やサービスへの関心が高く、民間企業側から見てもビジネス機会を開拓する絶好のチャンスともいえます。

また、SDGsに取り組むことは、民間企業の社会的な価値を高めることにもつながる等、大きなメリットを享受できる可能性があります。

こうした背景から、民間企業でSDGsへの貢献をめざす動きが広がっています。

実際、日経SDGs経営調査の回答企業の8割は、企業の開示報告書などになんらかの形でSDGsの17のゴールへの貢献を記載している、と答えています。

(新規市場と雇用が生まれる)

また、「ビジネスと持続可能な開発委員会」脚注2が2017年に公表した報告書では、自動運転や遠隔医療、再生可能エネルギーなどSDGsのゴールを達成することで、2030年までに全世界で年間12兆ドルもの新規市場が生まれ、3億8000万人の雇用を創出する可能性があると指摘されています。

SDGsの中でもとりわけ気候変動への取組みは関心が高く、多くの民間企業が貢献を掲げています(図表2)脚注3。

このように現在では、SDGsを考慮して事業を行うことが、企業にとってビジネスチャンスになると同時に、リスクマネジメントおよび社会的責任であるという考えが浸透しつつあります。

ESG投資とSDGsの関係

ESGとは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)の総称で、ESG投資とは、投資の意思決定の際にこの3つの要素を考慮した投資を指します。

(ESG投資が生まれた経緯)

元々、SDGsやその前身のMDGsが採択される前から、米国を中心に、企業がいかにして社会貢献をするかという観点で議論がなされてきました。

このような中で、ESGという考え方が生まれた契機となったのは、2006年に、当時の国連事務総長コフィー・アナン氏の提唱によって打ち出された責任投資原則(PRI)です。

これは、投資家に対して、投資先を選ぶうえで、企業のESG情報を考慮した投資プロセスを取り入れることを呼びかけるものでした。

(SDGsへの取り組みをESGで評価する)

しかし、企業からすると、ESGの重要性は理解しつつも、具体的にどう行動すればよいかがはっきりしませんでした。 そうした中で出てきたのが冒頭に説明したSDGsです。

国連でSDGsの2030アジェンダが採択され、全世界的な課題が明示されたことで、各企業は、自らの事業領域に照らし合わせて、その課題にどう向き合い、解決に向けてどう取り組むかを考えることができるようになりました。

その結果、とくに欧米を中心に、SDGsをビジネスで解決しようという機運や事例が生まれ、ESG投資家はそうした企業を評価し、投資することができるようになってきたのです。

ESG視点での資産形成により持続可能な社会の実現に貢献する

投資家が企業のESGへの取組みを正当に評価するには、企業のESGに対する方針や取組みの情報開示が必要となります。

例えば、製造過程でのエネルギー資源消費量、製品再利用の状況、従業員の有給休暇取得率などです。

企業側では、こうした環境・社会・企業統治(ESG)に関する情報を開示する先が少なくありません脚注5

(ESGを重視する投資家)

一方、投資家側でも、世界最大の公的運用機関の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が投資基準にESGを考慮する旨を明記する等、ESGを重視する姿勢を明確に示しています。

そうした動きに呼応するように、 SDGs等への資金供給を含めたESG関連事業に投融資するESG債券の国内公募が、2016年の450億円(3件)から、2020年には、2.1兆円(146件)となったほか、ESG関連ファンドの新規設定本数も、同期間で3本から33本になるなど大きく増加しています。

(ESG投資の課題)

ただ、ESG投資には課題もあります。それは、民間企業が投資家や消費者等に向けて開示するESGに対する方針や取組みの情報開示に関する基準が複数存在し投資家による投資対象の選定を難しくさせていることです。

こうした状況下、国際的な財務会計基準を設定している「IFRS財団」が、2021年11月の国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)において、比較可能な共通基準を開発する機関として、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)の設立を発表しました。

ISSBは2022年半ばまでに、気候変動分野の共通の情報開示基準を打ち出す予定です。 共通基準が作られれば、ESG投資の一層の拡大に弾みがつくことで、投資資金の流れが変わり、気候変動等の対策にもつながることが期待できます。

(私たちにできること)

いずれにしても、ESG投資の広がりはSDGs達成に向けて不可欠です。私たちが、それぞれの資産形成にあたりESG投資の視点も踏まえることで、民間企業のESGへの取組みが促され、持続可能な社会の実現に向けた好循環が生み出される可能性が大きくなります(図表4)脚注6。 この好循環を生み出すためには、一時的・短期的ではなく、継続的かつ長期的な視点で投資を行うことが求められます。

まとめ

SDGs、ESG投資、そしてそれが私たちの資産形成とどう関係するのかを見てきました。SDGsは、今ある社会をより良くするとともに、次の世代のためにどう貢献していくのかという問いかけでもあります。この大きな問いかけに応えるため、私たちができることの一つが、それぞれの資産を、ESG投資を通じて活かしていくことなのです。

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